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中小企業が賃上げに対応するには



2023年5月の消費者物価指数は2020年5月と比較して3.2%上昇しました。


最近は、マクドナルドが値上げを発表したのが話題になりましたが、私達の身の回りで値上げを耳にすることが多くなりました。




消費者物価指数とは、全国の世帯が購入する財やサービスの価格を総合した価格の数値です。つまり、私達が普段購入する商品やサービスなどの価格の変動を表したもので、この数値が上がっていると普段の出費が多くなっているという判断ができる数値といえます。




賃上げの必要性について説明するうえで、なぜ購入する商品やサービスの話をしたかというと、現在の状況のように購入する商品などの価格があがっても、従業員に対して賃上げを講じなければ、その給与を受けとる従業員が普段の生活で購入できる商品やサービスの量が減少します。なぜなら収入は変わらないのに支出だけが増加したからです。従業員は消費者でもありますから、消費者の商品購入意欲が減退し、企業の商品の売れゆきが悪くなり売上が下がり、さらに従業員の給与をあげることが出来ません。このような負のスパイラルを生じさせます。反対に賃上げを行うことで、従業員である消費者の購買意欲が増進し、結果的に売上や業績の向上に繋がる正のスパイラルを生み出すと言われていることから、賃上げの重要性が叫ばれています。




ここで、実際の賃上げ状況について見てみます。


厚生労働省が5月23日に公表した毎月勤労統計調査の令和4年度結果確報によると、令和4年度の実質賃金は、前年度から1.8%減少しました。


現金給与総額としては、前年度から1.9%増加しましたが、上で説明した消費者物価指数が前年度から増加し、賃金の増加分を上回ったため、実質的にマイナスという結果でした。


さらに分析をしてみます。2023年5月に経団連が公表したデータによると、大手企業の定期昇給とベースアップを併せた賃上げ率は3.91%で、30年ぶりの高水準とのデータがあります。


これらのデータ複合的に見ると、大企業は賃上げを実施し現金給与の平均を引き上げ、多くの中小企業は賃上げを実施できておらず、現金給与の平均を押し下げている現状が見て取れます。


単に実施しているかどうか。だけの違いなのでしょうか、これは、大企業と中小企業の財務体質からくると言えます。


まず、賃金の構成について、細かい説明は割愛しますが以下の式で計算されます。


賃金=労働分配率×労働生産性


そのため、賃上げに際しては労働分配率、労働生産性のいずれかを向上させる必要があります。


このうちの労働分配率は付加価値に占める人件費の割合で計算されます。


労働分配率=人件費/付加価値


統計データを見ると、大企業は付加価値に占める人件費の割合が低く、中小企業は付加価値のほとんどが人件費を占めていることが多いことから、中小企業は人件費に割り振ることのできる原資の余力がほとんどなく、賃金をあげることが難しいと考えられています。




では、中小企業はどのように賃金を上昇させていけばいいのでしょうか。


既に述べたように、労働分配率を上昇させるに際しては分母である付加価値が小さいということも理由としてありますが、労働分配率を上昇させると反対に資本分配率が減少することになり、資本装備率の減少、ひいては労働生産性を減少させ、結果として賃金の上昇に繋がらない可能性があります。


そのため、次に賃金を構成する労働生産性の向上について検討します。


労働生産性は付加価値を労働投入量で割ったものと定義します。


労働生産性=付加価値/ 労働投入量


そのため、労働生産性をあげるには付加価値を上げるか、労働投入量を減らすかのいずれかになります。


労働投入量の構成は主には従業員の働く時間となります。単に労働時間を減らすとアウトプットが減少し、その影響で付加価値も減少することが考えられます。そのため、労働投入量を維持したまま、アウトプットを増やし、付加価値をあげることが労働生産性の向上につながられると考えられます。


分母である労働投入量を増員により増加できればいいのですが、人材確保が難しいと言われている現状を踏まえ、別の観点として労働の質を向上させ付加価値を向上させる観点を探ってみます。


広義の労働投入量という観点では、直接にアウトプットの向上に寄与する、製造業における製造機械などを更新することも考えられますが、ここでは、従業員が創出するアウトプット、労働の質を向上させる方策について検討します。


労働の質を向上させるには、より短い時間(少ない労働量の投入)でアウトプットを創出できる状況を整える必要があります。


例えば、業務時間の短縮に寄与する業務効率化システムなどの導入や、スキル・知識の向上のための従業員への教育機会の提供などが考えられます。




これらの方策については費用がかかるうえ、システム・教育いずれにおいてもすぐに効果が現れるものではない点に注意が必要です。


すなわち、投資をしただけではすぐに効果に直結しないという性質であるということです。


業務効率化を推進するシステムを導入したとします。そのシステムは既存の業務フローにすぐに馴染むものでしょうか、そのシステムを活用する従業員はすぐに覚えられるでしょうか。これらを勘案すると導入するだけで大きな業務効率化に繋がるケースはあまりなく、中長期的な目線で見ることが必要です。


そのうえ、システムにおいては流動性が高く、バージョンアップで対応出来ない場合や、業務や処理方法が変わりシステムとの連携ができなくなった場合などは、更新・変更が必要となり、あらたな費用が発生します。加えて、システムを活用出来る従業員が辞めた場合、また一から覚え直しになる可能性もあります。


教育機会についても同様です。現在はリスキリングや従業員への教育投資を拡大する政府主導の流れもあり、従業員教育を行う際の助成金も充実しています。


(人材開発支援助成金はこちら)




しかし、いくら先輩社員からの指導・教育、社内外での研修を実施し知識やスキルをつけてもらっても、その人自体が辞めてしまうと、助成金が出たとしても費用はゼロではないため研修費用は損失となってしまいます。


付け加えると、代替できる人材が社内ですぐに手配できるとも限りませんので、社外から調達することになります。 2019年のリクルートが発表した就職白書では、300人未満の中途採用コストは63.6万円となっていますので、人員の補充が必要な場合、採用にかかkるコストもさらに上乗せされてきます。




これらを踏まえると、中小企業は上記のシステムへの投資、教育機会の提供などの施策と併せて、待遇の向上や人事制度の整備など従業員を定着させるための施策も講じていく必要があります。


待遇向上では、例えばフレックスタイム制度やテレワークの導入、休暇制度の充実などは管理コストは発生するものの、直接に給与を上げなくても従業員満足度があがる施策となりえます。


 人事制度の整備も従業員のモチベーションを高め定着を促進する一つの方法となりえます。人事制度の主なものには、業務や成果を基準に基づき数値化する評価制度、従業員をその能力や役割・職務によって区分・序列化し、権限や責任、基準を明確化する等級制度、各基準に従って給与や賞与を決定する賃金制度、会社のあるべき姿を目指すにあたり、その達成や実行に必要な業務知識・スキルなどのギャップをうめる教育制度などがあります。


これら人事制度の構築は、形だけ整備しても効果を発揮しませんが、実効性をもち、正しく連動させることで、従業員のモチベーションを向上させ、従業員の定着に寄与するだけでなく業績向上に繋げることもできるでしょう。


これらの施策を併せて実行していくことで従業員の定着に寄与し、労働生産性の向上させ、ひいては賃上げへの対応、業績向上につながると考えられます。




まとめると、社会的に潮流となっている賃上げに対して、中小企業においては、労働生産性を向上させるために労働の質を向上させる必要があることを説明しました。


労働の質を向上させるには、業務効率化を推進するシステムの導入や従業員に対しての教育機会の提供が必要ですが、中小企業においては代替要員も限られているため、従業員の定着に繋がる、待遇の向上、人事制度整備なども併せて講じていく必要があります。


ここまで見ると、やることが多く何から手をつけたら良いか分からないという状況に陥るかもしれません。


 待遇の向上、制度整備、システムの導入、教育機会の提供いずれにおいても政府の様々な支援策がありますので、助成金の活用をきっかけとして手をつけられるところから始めるのがいいでしょう。

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